行政書士は「食えない資格」と言われることがあります。
実際はそんなこともないので、行政書士の実態がどうなっているのか解説していきます!
行政書士の実態調査から見る現実
行政書士の実態を知るには、実態調査の結果が1つの目安になるでしょう。
これは、日本行政書士会連合会が5年に一度実施している調査です。
最新のものは、平成30年度の調査結果になります。
ここでは、平成30年度行政書士実態調査の結果を見ながら、行政書士の現実に迫ります。
行政書士で年商1,000万円以上は10%
実態調査の結果、行政書士の年商は次のようになります。
- 年間売上500万円未満 78.7%
- 年間売上500万以上1000万未満 11.3%
- 年間売上1000万以上 10%
年商、つまり年間売上が1,000万円以上の行政書士は、10%という結果が出ています。
これを見ると、稼げている人が少ない印象です。
ところが、実態調査では、次のような結果も出ています。
- 年齢構成 61歳以上 55.5%
- 職業属性 行政書士専業 52.0%
※弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の登録は28.7% - 行政書士登録資格
行政書士試験合格 68.5%
※弁護士・弁理士・公認会計士・税理士 14.1%
※行政事務 15.5%(公務員が一定期間勤務後に行政書士資格をもらえるもの)
(未回答 1.9%)
行政書士の55.5%が61歳以上という結果です。
年金をもらいながら、年間数百万の売上で充分という人も多そうです。
また、行政書士専業で行っている人は52%。
半数は副業兼業なのです。
とりあえず登録だけしている人も少なくありません。
弁護士・弁理士・公認会計士・税理士は、登録だけで行政書士資格が手に入ります。
仕事上、定款や議事録作成、職務上請求書で戸籍や住民票の取得ができるように、登録だけする人もいます。
この方たちの行政書士としての売上は、微々たるものかもしれません。
行政書士で本気で売上を上げようと活動している人は、実は半数もいません。
それなのに、全体の10%が年商1,000万円以上と考えると、実は稼げていない業界ではないとわかるはずです。
年商1,000万円は、年収いくら?
年商というのは、年収とは違います。
1年間に売り上げた数字が年商で、そこから経費を引いたのが年収です。
事務所を構えると、事務所家賃や光熱費、通信費や交通費などの経費がかかります。
それらを引いて手元に残ったのが年収です。
さらにそこから税金や社会保険料(年金・健康保険)が引かれたものが手取りです。
年商1,000万円の場合、年間経費が300万円とすると、年収は700万円になります。
企業の課長くらいでしょうか。
家族を養うとなると、これくらいの収入が必要になるのでしょう。
共働きや独身の場合は、もう少し少なくても生活できるはずです。
自分に必要な収入を考え、それに経費を加え、年商いくら必要なのかを計算してみましょう。
必要な年商を開業2年、3年で達成するイメージです。
行政書士は稼げないわけではない理由
行政書士実態調査の結果からもわかるように、行政書士は稼げない仕事ではありません。
年間売上高について、もう少し詳しく表にまとめてみました。
1つ前の調査結果も並べておきます。
<行政書士実態調査 年間売上>
売上高 | 平成30年度 | 平成25年度 |
500万未満 | 78.7% | 78.0% |
1000万未満 | 11.3% | 11.4% |
2000万未満 | 5.3% | 5.0% |
3000万未満 | 1.8% | 1.9% |
4000万未満 | 0.8% | 0.9% |
5000万未満 | 0.5% | 0.6% |
1億未満 | 0.8% | 0.7% |
1億以上 | 0.3% | 0.3% |
未回答 | 0.4% | 1.2% |
この表からわかるように、年商5,000万円以上は1.1%いますし、1億以上も0.3%います。
行政書士の売上の上限が、1億以上あるとわかります。
行政書士の仕事は、比較的単価が高いです。
例えば、建設業許可なら8~15万円くらい、遺言書作成は10~30万円くらいでしょうか。
自由価格なので、事務所によって差はありますが、飲食店や小売に比べると、1件が高いことは納得いただけるでしょう。
業務によっては、1件数百万になるものもあります。
専門性を身に付けることで、単価は高くなります。
「食えない資格」と言われがちな行政書士ですが、実はそんなこともないとわかっていただけたのではないでしょうか。
年商1,000万円は、決して難しい数字ではありません。
ますは実態調査の結果から、業界の現実をイメージしておきましょう。